Vol.42 ガレ、ドーム、一度触れてみては


10年ほど前から、ある有名な西洋骨董商と仕事をするようにになり、ガレ、ドームなどの取り扱いも増えてきました。

ガラスの骨董品というと、絵画より縁遠いものと思われがちですが、一度その魅力にとりつかれると、次から次へと発展していくものです。特に日本では昔からガレ、ドームに人気があり、近年いい作品を入手することが難しくなっています。当然のことですが、19世紀中頃から20世紀前半までの短い期間に作られ、2度の大きな戦争を経て、その中で現代に残されたものは、そう多くはありません。一度手に入れたコレクターは何年、何十年と手元に置いておきます。

最近、アジアのある地域で偽物がつくられ始め、美術市場に入り込んでいるのは悲しいことです。

ガレ、ドーム、ラリックというと、諏訪湖の近くにそれぞれ美術館があります。

亡くなった父が、余命僅かな時、私にガラスを見に行こうと言い出したことを思い出します。その時期、私はまだ別な仕事もしており、むしろ美術は副業的なものでした。父を介護しながら、美術館に入りました。その時、ガレ、ドームの圧倒的な美しさ、その神秘的な光に魅せられてしまいました。父は(よく見ておくんだよ)と言い、病いのことも忘れ、一人の美術商として、一つ一つ見ていました。今、私が、ガラスを扱う様になったことを静かに見ていることだと思います。

ガラスに光があたり、ある時は優しく、ある時は厳しく、また幽玄の時を人に与えてくれる、不思議な世界です。

市場には少なくなったとはいえ、小品でいいものもあります。自分の手元に置いて、少し贅沢ではありますが、大人の楽しみとして考えてみてはどうでしょうか。時代を越えた、美しさが見えてくるかもしれません。

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