アートニュース

Vol.37 ~シンガポール美術市場 3~ 倉庫ビジネス2013/06/27

カテゴリ:[コラム]


近年、アジア経済の成長の中富裕層が美術品を投資資産として購入する動きが活発化しています。シンガポールはそこに目を向け、こうした美術品や貴金属など、いわゆる現物資産を安全に保管し、取引も手助けすることを売り物にした「倉庫ビジネス」を考えたのです。
2010年、チャンギ・ノース空港に隣接して、美術作品など収集価値のあるものを無税で保管できるフリー・ポートを設備し、政府はこの倉庫の敷地を、新たに「自由貿易地区」に定め、物品サービス税などが免税される優遇措置をとったのです。(シンガポールはもともと港や空港のそばに関税や消費税にあたる7%の物品サービス税が一切かからない地区、「自由貿易地区」を設けています。)倉庫ビジネスもシンガポール政府が強力に後押ししています。

フリー・ポートは床面積2万5千平方メートル、およそ90億円をかけて建設した世界最先端のセキュリティシステムを誇る倉庫です。現在、世界的なオークション会社や、スイスやカタールなどの美術品や貴金属を売買する会社など8つの企業がこの倉庫をテナントとして借りています。倉庫は保管するだけでなく、その中でギャラリーの開催が出来るので、倉庫を借りているテナント主催の絵画の売買が直接行われたりしています。ちょうど空港の免税店で、売り手と買い手が直接取引している様なイメージです。『アジアの富の取引は是非シンガポールで』という政府の掛け声もあって、この倉庫に入っているテナントの事業は順調です。

あるテナントは去年の貴金属の取引が、一昨年(2011年)の7倍に増えました。今後の期待も高そうです。

その一方で、最大の問題点はブラックマネー、不正蓄財などの資産の逃避先として悪用される恐れがある事です。

そうした問題があっても、資源が無く、水すら輸入に頼る人口530万のシンガポールにとって、世界から人、物、金を集める戦略は死活的に重要です。倉庫ビジネスは取引そのものが無税でも、企業や人が集まる事で法人税や観光収益など様々な副次的な利益が期待できるのです。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です