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Vol・1  シングルオーナーセール   参考資料:株式会社サザビーズジャパン発行 ホワイトクラブ                                      
一般的なオークションが色々なコレクターからの出品で成り立つヴァリアスオーナーセール(VOS)であるのに対して、あるコレクターからの出品だけで成り立つオークション(セール)をシングルオーナーセール(SOS)といいます。
シングルオーナーセールにはそれぞれのコレクターの人生の物語が記されているからか、人々を引き付けるものがあります。
SOSで一番多いのは、VOSオークションカタログの巻頭にSOSのセクションを方法です。これがある程度の規模、質になると別冊カタログが用意されます。究極は、VOSとは別の日に催すオークションです。10月に催されたサフラ・コレクションのセールは、6巻の別冊カタログからなるオークションが4日間も続きました。
SOSの出品者には大きく分けて3つのタイプがあります。セレブ、セレブかつコレクター、セレブではないけれどその分野で卓越したコレクターです。
セレブのオークションで真っ先に思いつくのは、1996年にジャクリーン オナシス・ケネディーの遺品を取り扱ったオークションです。330-460万USドルの落札予想価格に対して、最終的な売上は10倍の3450万USドルに達しました。その上入札者数は18,000人。これ以外で3,000人を超える入札者数を記録したオークションが見当たらない事からも分かるようにいかに桁外れだったかがうかがえます。人工真珠のネックレスまでもが1,000万円を超えて落札されました。出品作品の価値というよりも自分達の時代を代表するケネディ家と歴史を共有したいという入札者の熱い思いが伝わってくるオークションでした。

サフラ・コレクションセールは、セレブかつコレクターの部類属します。自宅の食堂、居間を再現した下見会場には、出品される食器、銀器、稀少本、象牙調度品が所狭しと展示されていました。ここではサフラのライフスタイル、審美眼が価値を生み出しているというオークションの別の側面があります。家具の中には、今回のセールで最高値690万USドルを記録した日本の蒔絵がはめこんである類16世調の家具がありました。コレクションの対象の幅広さを感じます。落札価格は数千ドルのものもあり、全体的には印象派の画家に比べるとずっとお手頃ですが、室内の小さな調度品に至るまで住まいの主のライフスタイル、審美眼がいきわたっています。
今回のオークションの売上は、落札予想価格の総額4,000万USドルに対して4,600万USドルにのぼりました。

最後に、セレブではないものの、その分野で卓越したコレクターのSOSです。
近代美術、中国美術といった主要分野に多いが、2010年の「An Exceptional Eye;A Private British Collection」のように18世紀の英国美術の水彩、ドローイングのトップレベルの作品が出品され、その分野に再び脚光が集まるケースもあります。

このようにSOSにはひと味違ったオークションの楽しみ方があります。欧米ではSOSオークションにしか参加しない方もいらっしゃるそうです。

                                                                             
Vol.1-2  2011年10月4日ー5日 香港 中国美術    参考資料:株式会社サザビーズジャパン発行 ホワイトクラブ
中国陶磁器工芸品セールは、2011年春に続き出品された玫茵堂(メイインタン)コレクションパート2で始まりました。明永楽時代(15世紀)の青花梅瓶が、10分間にも及ぶ競り合いのあと明の陶磁器の最高記録価格である1億6,800万HKドルで売却されました。
そして、清乾隆時代(18世紀)の紛彩桃文天球瓶が9,000万HKドルで売却されました。昨今清朝作品が高額を記録するケースが多い中、今回明時代の作品に15億以上の価格が付き、市場の幅が他の時代の作品にも広がってきた事が証明されたオークションとなりました。

Vol.2  エリザベステーラー遺品オークション (サザビーズで購入、クリスティーズで売却へ)
2012年2月クリスティーズが開催したオークションで、昨年3月に亡くなられた米女優エリザベステーラー(1932-2011)が所有していた絵画がプライベートオークションとして出品されました。

ゴッホ(1853-1890)の絵画「サンレミの保護院と礼拝堂の風景」が予定落札額700万ポンド(約8億)だったのに対して1010万ポンド(約12億)で落札されたのはニュースになりました。
この絵画は、彼女の父親が美術品ディーラーで、1963年にサザビーズのオークションでわずか9万2000ポンドで購入し彼女にプレゼントした作品です。
(当時のレートを考えても3千万円位)
他には、ヴァン・ドンゲン(1877-1968)の絵画「馬上の散策」が落札予想価格12万ポンド~18万ポンドのところ60万1250ポンド(約7,200万)で落札されました。(約5倍)
(横道報道・・・J.Pカシニョールの初期の絵はヴァン・ドンゲンに似ているといわれています。)
全ての絵画がエスティメイト(落札予想価格)より高額で落札されました。
作品の価格に往年の米映画スターエリザベステーラー所有という付加価値が大きく反映されたのでしょう。

今回開催されたロンドンのオークションでは、経済状態がよくないので、静観するのではないかと日本からも関心が集まりました。しかし、蓋を開けてみると参加者が増えていて落札予想価格よりオーバープライスにて落札されることとなりました。
この状況から美術品市場は、金融市場に比例してはいないといえるのではないでしょうか。

そして、今回のオークションよりアーティストバリュー(日本でいう著作権)として4%加算されることになりました。
今のところヨーロッパだけが導入していますが、他の海外にも今後、導入されるようになることでしょう。
これからの美術品価格に大きく影響を与えるかもしれませ

ヴァン・ドンゲン「馬上の散策

クリスティーズオークションカタログ 2012年2月8日 ロンドン
販売価格¥1,000

Vol・3  ムンクの「叫び」オークションへ
大手オークション会社サザビーズが、エドヴァルド・ムンクの代表作「叫び」をオークションにかけることを発表した。「叫び」は油絵、パステル、リトグラフ、テンペラでそれぞれ描かれており、全部で4点存在するが、今回出品されるのはこのうち、パステル画で描かれたものである。
4点のうち最も鮮やかなもので、今まで殆ど公開されてこなかったものだ。この作品は、ムンクの友人の息子でノルウエーの実業家パター・オルソン氏が所蔵しているものである。64億円を超える値段がつく可能性があるというが、そうなればパステル画で描かれてある作品の史上最高価格になるだろう。数々の美術館がオークションに参加するのではないだろうか。

ムンクは、母を5歳で、姉を14歳で亡くし早くに死に目を目の当たりにする。その経験が作品に大きく影響を及ぼした。「わたしの家庭は病気と死の家庭であった。たしかに、わたしはこの不幸に打ち勝つ事はできなかった。だから、このことは、わたしの芸術にとって決定的なものであった。」とムンク自身言っている。「孤独」、「死」、「不安」が作品に色濃く表されている。

「叫び」についてムンクは日記にこのように書いている。
「私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄りかかった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被されるようであった。友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。」

これから分かるように、ムンクの「叫び」は男が叫んでいるのではなく自然の叫びに耐えかねて男が耳を押さえている様子を描いた絵である。

やがて必ずやってくる死。自然を貫く死は決して抗えず、それに対して耳をふさぎたい、いや・・ふさがずにはいられない人間の姿がある。

世界的な金融危機、これからどうなっていくのだろうか・・・漠然的な不安がたちこめる。自然が、時代が、赤く叫んでいる現代にムンクの「叫び」が出品されるのは興味深い。

5月のオークションに注目する。




Vol・4  竹久夢二の作品見つかる
大正ロマンを代表する作家、竹久夢二(1884-1934)の未発表作品が静岡市内の旧家から見つかりました。
その作品は、静岡市美術館が夢二研究者の第一人者長田幹雄(1905-1997)が志田喜代美さん(静岡市清水区の郷土史研究家)へ宛てた手紙に「静岡市内に重要な夢二の肉筆がある。」というのを見つけ、調査し発見されました。夢二が肉筆画を描き始めた頃と思われる絵で縦127cm横108cmの屏風の左側に貼られてあり、右側には ※1吉井勇(1886-1960)の短歌が貼られてあります。着物姿でかんざしをつけ、のれんをくぐる可愛い娘を描いたもので、「夢二式美人画」そのものといえるでしょう。
発見した静岡市美術館は、「茶屋の娘」と名付けました。

静岡市美術館で開催中の 「竹久夢二と静岡ゆかりの美術」 で3月25日まで公開されているそうです。
初期の夢二の肉筆画でこのように状態の良いものが発見されるのはとても珍しく、機会があれば見てみたいです。

他に美人画というと、「西の松園、東の清方」といわれた鏑木 清方(カブラキ キヨカタ)(1878-1972)と上村 松園(ウエムラ ショウエン)(1875-1949)がいます。

鏑木 清方は東京神田生まれの浮世絵師、日本画家です。清方の美人画は、優美でありながら江戸の粋な姿を描いたものです。代表作には、「一葉女史の墓」「築地明石町」があります。
「一葉女史の墓」は「たけくらべ」の主人公「美登里」が一葉の墓に訪れ墓石に寄り添っている姿を描いたものです。
清方は、子供の頃から一葉を愛読していて一葉を題材にした作品を他にも描いています。

上村 松園は、京都生まれの日本画家です。(日本画家の上村 松篁(ウエムラ ショウコウ)(1902-2001)は息子、上村 淳之(ウエムラ アツシ)(1933-   )は孫にあたります。松園をはじめ、オークションに出品されています。)
松園の美人画は、女性の目を通し、気品ただよい凛としている姿を描いたものです。
代表作には、「序の舞」「人生の花」があります。そして、異色作(1920年前後の作品)といわれている「花がたみ」「焔」があります。
「花がたみ」は、錯乱して舞い狂う姿を描き、「焔」は、源氏物語を題材にした作品で生霊いとなった姿を描いています。


※1・・吉井 勇  大正、昭和初期の歌人。処女歌集「酒ほがひ」で有名になる。歌集「祗園歌集」を新潮社より刊行、その時に竹久夢二が装幀を描く。
            現在、高知県香美市に記念館がある。


                                        
参考 上村松園作            参考 上村淳之作            参考 竹久夢二作        参考 鏑木清方作



  ※竹久夢二(肉筆 版画)、上村淳之(版画)作品についてはお問い合わせください。        





VOL・5  中国人画家がピカソを抜きトップへ
2011年の世界絵画競売市場での落札総額が中国人画家 張大千(チョウ タイセン)(1899-1983)がスペイン画家パブロ・ピカソ(1881-1973)を抜きトップになったと伝えられました。
張大千の総額は5億5453万ドル(約443億)で個人としても過去最高となりました。2位もやはり中国人画家の斉白石(セイ ハクセキ)(1864-1957)の5億1057万ドル(約408億)3位は、米画家のアンディ・ウォーホル(1928-1987)の3億2588万ドル(約260億)でした。
2010年までの14回で13回トップだったピカソは3億1469万ドル(約252億)で4位となりました。

斉白石の「松柏高立図」は2011年5月に中国ガーディアンオークション主催のオークションで世界最高値の4億2550万元(約53億)で落札されました。

張大千の作品は、中国で人気があり作品のほとんどが中国で競売にかけられ中国人が買い取ったとみられています。
中国の不動産投資に多かった「チャイナマネー」が美術品市場にも急速に動いているのがわかります。ピカソなどの誰でも知っている有名作家の作品は、世界中にファンが居て価格は高値で安定しています。しかし、中国人作家の美術品は、買い手のほとんどが中国人のため、中国の経済急成長の今はどんどん高値になっていますが、株式市場の急落が起きたその時に、どうなるのでしょうか・・・




Vol・6  フェルメールからのラブレター展
ヨハネス・フェルメール(1632-1675)の3作品と17世紀のオランダにおけるコミュニケーションの様々なあり方を紹介した作品が展示されていました。
17世紀、オランダは他国に比べ識字率が高く、信頼できる郵便制度も成立し手紙にやり取りが急速に増え、コミュニケーションの手段として個人の気持ちを伝える手紙は重要な役割をしていました。
離れた友人や恋人との手紙のやり取りから生まれる人の表情が描かれています。そして、作品の中にある小道具、壁にかけてある絵や楽器や装飾品などには、象徴的な意味合いを持ち、その作品の中に物語を潜ませています。

「手紙を書く女と召使」は、床に紙が散らばっていることから激しい感情の高まりが感じられます。そして、壁の絵「モーセの発見」は、モーセの母が「ヘブライ人の子は皆殺しにせよ。」と命じたファラオの布告から我が子を守るために息子を籠に入れて隠し、その子を見つけて育てた王女について語る旧約聖書の話を主題にしています。
当時この話は敵対どうしの争いを鎮めるたとえとされ、恋人との和解を求める女性の心理と結びつけています。
17世紀のオランダの作品には召使が描かれている絵がありますが、召使が居た家はわずか10%~20%でした。

「手紙を書く女」は、背景の静物画に薄らとヴィオラ・ダ・ガンバが描かれています。音楽は愛と調和の象徴を意味し、美と愛の間の調和ある関係をほのめかしています。
この作品は、物語的な要素を最小限にして光や色、構図を注意深く扱う事でこの瞬間の女性の心理に焦点があてられています。
サテンのリボン、真珠の耳飾り、アーミンの毛皮で縁取りされた黄色の上着、机の上の真珠など、光の反射や材質の違いが見事に描き分けてあります。上着の黄色は、本当に吸い込まれるほど綺麗な黄色でした。
その色の調和から静かな空間が生まれています。

「手紙を読む青衣の女」は、2010ー2011年にかけて修復作業を終え、当時フェルメールが描いた色合い 明るい光の表現が蘇りました。
この作品は、フェルメールブルーと呼ばれるほどの天然ウルトラマリンブルーがとても美しく印象的です。
色数をおさえた色彩とモチーフで描かれていて、両腕を体に引き寄せて手紙を読むという小さな仕草だけで感情を表現しています。壁に貼ってある地図は、恋人が遠くに行ってしまっているという意味をほのめかしています。(海景色は、海は愛、船は恋人を表現している。)

私的な手紙のやり取りがほとんど姿を消してきた時代ですが、これらの作品を通して、手紙の良さを再認識しました。




                          
          参考 「手紙を書く女と召使」          参考 「手紙を書く女」            参考 「手紙を読む青衣の女」